一塊のゴムと侮るなかれ

私はプレス成型を担当しています。
最近、プレス工程で使われる蹴り出しのゴムのことで、頭を悩ませています。
この蹴り出しのゴムというのは、プレスで成型された製品が、プレスから押し出される時、製品に加わる衝撃をやわらげる役割を果たします。

製品に傷や欠けが出るのを防ぎ、スムーズに製品が押し出されるのです。プレスの調整を細かく行うことで、ある程度は製品に傷や欠けが出るのを防ぐことは可能ですが、最終的には、ゴムの材質の選択や、形や大きさなどの細かい調整の出来不出来で、製品の外観が大きく左右されます。一度に数万数十万という数の製品を量産するために、プレスには欠かせない存在なのです。

成型する製品の大きさや形に応じて、材質が異なる数種類のゴムの中から一つを選んで切り出し、削って、形を作り出していきます。
そして、プレスに取り付け、試し打ちを行い、製品に傷や欠けが出る、スムーズに押し出されない、などの問題があれば、再びプレスから取り外して削る、という作業を繰り返していきます。
また、切って削るという引き算的なことだけではなく、蹴り出す強さやタイミングなど、0.01ミリレベルの微妙なニュアンスを出すために、細かく切った紙テープやビニールテープを、製品に接触する面に貼るなど、足し算的なことをする場合もあります。

蹴り出しのゴムは、一度形が決まると、その製品を生産し終えるまで、ずっと手を加えずに使い続けることが多いのですが、時々、生産を行っていくうちに不具合が発生することもあります。朝から晩まで、蹴り出しのゴムの調整に苦闘することもあります。

ベテランの人たちが、悪戦苦闘している筆者を尻目に、製品や蹴り出しのゴムの形を見て、それから、簡単(そうに、筆者には見える)に手直しを加えたものが、製品に傷をつけずにスムーズに押し出していくことが多々あります。
器用不器用の個人差はあるでしょうが、それ以上に、知識や経験、考える力の差が大きいのだろうと思い、ものづくりの奥深さを痛感します。

このコラムの中で、たびたび取り上げられる「技術の伝承」ですが、上記のような、日常の業務の中であまり取り上げられることのない、小さな、言語化しにくい作業についても、次代を担っていく人たちにどのように伝えていくのか、さらに頭を悩ませることになりそうです。

中水野工場 プレス成型部署 K.S

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