第八回 製造部門「ベテランの向上心」

「現場に聴く! 職人インタビュー」では、ホームページだけではお伝えしきれないトウゴクセラミックの製造や生産管理などの情報を、現場へのインタビューを通して皆様にお伝えします。
第八回は、プレス製造課の加藤さんにお話を伺いました。
当社のプレス製造課では、アルミナを主力として、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素など、様々な材質の小型精密部品や大量生産品を、メカプレスや油圧プレスを用い、製造しています。
第一回では同じくプレス製造課の栗木さんからお話を伺いましたが、今回は同じ部署でも勤続25年を超えるベテランの視点から見る、「現場の声」をお届けします。
ベテランの立場から見る、「プレス成形」という仕事とその工夫
――本日はよろしくお願いします。まず、あなたの年齢、役職についてお答えください。
加藤です。もうすぐ52歳になります。
セラミック製品を作る成形部門の中でも、プレス成形を担当しています。
――この仕事を始めて何年になりますか?
もうすぐ26年になります。もう年齢の半分は当社に勤めていますね。
――となると、もうベテランさんですね。加藤さんは、プレス成形の中でもどんな分野を担当されていますか?
当社のメカプレスはその圧力に対して1tプレスや3tプレス、6tプレスと分類された色々なプレス機があるのですが、その中でも50tプレスや60tプレスをメインとして担当しています。
主にこの2種類のプレス機の専属となっていますが、優先的に行うといっただけで、すべてのプレスを扱います。
――50tや60tとなると、相当な圧力ですね。
そうですね。
他にも当社のプレス機には20tや40tと色々あるのですが、製品成形時の圧力は大体、製品の大きさに比例します。
小さい製品は1tから6tプレス等を用いる事が多いのですが、50tまで圧力をかけられる50tプレスでは、自ずと大きいものが作れるようになります。
今私がやっている製品だと、高さ7mmに直径50mmくらい。
大きいものになると縦100mmの横50mmと大型のものもあります。
――では、「プレス成形」という仕事について、簡単に説明していただけますか?
原料の粉末を金型に入れて、それにプレス機で圧力をかけ、焼成前の成形体を作る仕事です。
とは言え、ただプレスするだけではなかなか思うようにならないので、いろんな設定を混ぜながら工夫をしています。
――プレス成形をする上で、例えばどのような工夫がありますか?
製品の形状や材質により、工夫が必要になります。
シンプルなものなら、プレス機の上の圧力と下の圧力で成形体の上下バランスを均一にすることが重要となります。
ですが、段が付いた形状だとか、そういうものだと、金型自体がちょっと特殊になってくるんです。
まず、単純な形状のものに使用する金型は上パンチ、下パンチ、ダイスと呼ぶのですが、この3点をプレス機に取り付けることで成形することができます。
ところが、複雑な形状のものになってくると、パンチがインナーとアウターに2型必要となることもあり、他にも穴を開ける場合にはピンをたてたりと、製品の形状によって必要な型が変わっていくので、その場合は金型がいくつか合わさることになります。
ものによっては本当に複雑なセッティングが必要になってきます。
――あなたの一日のスケジュールを簡単に教えてください。
今現在、プレス工程の他に、品物を作るためのサンプル焼成を担当させてもらっています。
プレスの現場にサンプルを焼成する専用の炉があるので、朝一で炉が正常に作動したかチェックし、前日に入れたサンプルを取り出して確認し、その日に焼成するサンプルを炉に入れ、焼成をスタートします。
その作業が一区切りしたら、自分の持ち場に戻ってプレス成形を始めます。
プレス以外にも焼成の仕事に少し関わらせてもらっている形ですね。
――「サンプル」というのはどのようなものなのでしょうか?
量産するためのデータを取る用のものですね。
前回のデータ等を考慮して、品物を作り、それの確認のためにテスト焼成をします。
その結果を見て量産にかかる場合もありますし、本焼成と比較して更にデータを取る場合もあります。
あくまでテストなので、データを鵜呑みにする事はありませんが、おおよそのざっくりとした生産の方針を決めるために行っています。
各担当者が量産前にサンプル品を作っているので、それを私が焼成をします。
プレスと同じフロアにサンプル用の小型炉があるので、その様子を定期的に確認しながら、一日中プレス作業を続ける、という感じです。
――やはり一日中同じ製品に向かっている事が多いですか?
そうですね。量産品が多いので、やり始めたら目途が立つまでやるって事が多いですね。
同じプレス機で、色々な品物を作るので、その品物が終わったら次の品物に切り替えてっていうこともやりますし、他のプレスが忙しければそっちを手伝ったりと。
基本は50tプレスを担当しているんですが、納期や状況に合わせて流動的に動いています。
経験から得られた知見を活かす、最初の工程
――あなたの仕事は商品が出来上がる上でどのような役割ですか?
ここでミスがあれば、他の作業しているどなたにも影響が出てしまいますし、重要な工程だと思います。
製造に関わる工程はどこも重要なのですが、プレスは最初の工程なので、特に間違いのないように気を付けています。
――プレス成形をする上で、特に気を付けている事はありますか?
寸法はもちろんの事、欠け等にも気を付けています。
成形品って、焼く前なので、脆いんですよね。
気を付けないと欠けや傷、色々なリスクがあるので、それらを事前にコントロールして防いでいます。
塊であればある程度強度がありますが、それでも弱く、製品によるのですが、薄っぺらい板状のものや細いものはすぐにポキっと割れちゃったりしますし、どこかに軽く当てただけで壊れてしまいます。粗雑に扱う事は無理ですね。
原料や製品の形状によっても変わるので一概には言えませんが、「粉に圧力をかけて塊にした状態」でしかないので、取扱いは慎重にならざるを得ません。
――あなたの仕事は、社会でどんな風に役立っていますか?
色々あるのですが、一番わかりやすいものだと、釣り具の糸を通す部分、糸道に使われる製品を多く作っています。アルミナやSiC(炭化珪素)材質のものが多いですが、最近では窒化珪素のものも増えてきています。
一般的な大きさのものを小型のプレスで作ることが多いですが、大きい釣り具に使われる直径40mmほどのものなど、大小様々なものを生産しています。
――50tプレスでは比較的大型の製品を作っていると伺いましたが、こちらではどのようなものを?
50tプレスだと、大きめの品物を成形するため、様々な機械に組み込まれる大きめの部品を作るという感じですね。
材質は、アルミナやジルコニア、SiCなどを使っていますが、外側から目に見えるものではないので、釣り具と比べるとイメージしにくいと思います。
――特に密接に関わっている部署や役職はありますか?
ほぼ全体、全部に関わってきています。
次の工程はもちろんですけど、焼成、加工、プレスしたものを加工する場合もあるし、加工せずに焼成する場合もあり、バレル、研磨、検査、出荷、いろんな工程があるわけですけど、その都度、色んな所にコミュニケーションを取って話はします。
自分が作ったものがどういう感じかっていうのも、気になる所があれば気軽に聞けるので、横の繋がりは強いと言って良いと思います。
上下の繋がりに関しても、工場長にはお世話になっていますし、同じ部署の課長や部長とも仕事関係の相談をします。
――あなたの仕事は社内ではどういう立ち位置ですか?
そうですね。やっぱり最初の工程なので、他からは「ちゃんとして欲しい」っていう目で見られる仕事だと思います。
何もない所から製品を作るわけですから。
後の工程はそれを仕上げていくので、最初からダメならもう本当にどうにもならない。
重要ではない仕事などありませんが、この仕事はやはり重要だと思っています。
――あなたは、周囲からどんな風に思われていると思いますか? また、どう思われたいですか?
そうですね。「どう思われているのか」というのは分からないですけど、「どう思われたいか」っていうのであれば、勤続年数も長い方なので、ある程度は頼られるような存在を目指したいですね。
――他の方から、相談を受ける事などはありますか?
過去に成形したことのある品物について、相談を受けて、アドバイスする事はあります。
勤めている年数が長い分、今まで関わってきたものが多いんで、今までの過去の品物とか、前回どうやっていたかとか、この製品にはどういった注意点があるだとか、そういう分かりにくい、「経験したからこそ分かるような事」を、コミュニケーションを取りながら伝えるようにしています。
――プレス成形にも、職人ならではの「コツ」のようなものはありますか?
ありますね。
データとして数値を入れて、それで毎回同じものが出来るというものではないんです。
色々な条件が重なり合って、前回出来たのに今回出来ないっていう事も多々あります。
その場合は、やはり理解が深くないと対応しきれません。
「前と同じようにやってるはずなのに、どうしてだろう」というような悩みが出た時に、「こうなるにはこういう理由がある」というのが分かっていれば、その時々で対応できますので、経験と積み重ねが重要になってくる部分ですね。
前回と同じ品質は最低限。品質向上へのこだわり
――この仕事をしていて、特に苦労したエピソードがあれば教えてください。
本当にそれぞれに苦労があります。
複雑なものでも前回と同じ品質のものがすんなり出来る事もあれば、単純なものでも思うように行かないものもあり、生産の再現性についての苦労は一概には言えません。
自分では毎回、「前回と同じ品質のものは最低限」という目標を立てて、そこから段階を踏んで色々と改善して、周囲に共有して、品質を落とさないように取り組んでいるのですが、中々難しい事の方が多いんですよね。
プレス成形には色々な要因があるので、例えば同じ原料を使っていても、その時作られたロットによって、含水がほんの少しずつ違ったり、原料の状態に違いがあったり、そういうのが結構影響してきます。
「前回はこの設定で出来たけど、今回はこの設定でやらないと出来ない」っていうこともあり、結局はやってみないと分からない所が多いんですね。
その微調整と試行錯誤の苦労は、毎回あります。
――生産に影響する要因というと、どのようなものがありますか?
先ほども言った原料の良し悪し、気候や季節の影響、色々な要因があります。
それに合わせて最適なプレス機の設定等も変わっていくのですが、いくつもの要因が重なった場合は苦労しますね。
一つ一つあたっていかないと、どれが原因か分からないということもあります。
例えば、前と同じようにやる所からスタートして、成形圧力が高ければ、加水して成形圧力を下げるなど工夫する等、症状によって色々と考えて調整します。
そこから先ほど話題に出たテストサンプルを何度も焼いて、探っていくという繰り返しですね。
未完成品では問題ない仕上がりになっていても、焼成してみたら問題が発覚する事もあるので、この工程は重要です。
もちろん、特に調整しなくて前回と同じ条件で問題なく量産に入れるものもあるので、ものによりますね。
ここまでは成形の条件出しの話ですが、条件を出してからも大事です。
生産する上で同じように出来れば良いんですけど、やはりプレスを打っている内に気温や湿度による原料の状態、原料の充填のバラつきなどで条件は変わってくるので、設定を修正する必要があります。
例えば寸法が薄くなってしまったりとか、欠けが発生したりとか、そういうものを、歩留まりを良くするために絶えずチェックしています。
――プレス成形で特に苦労した形状などはありますか?
加圧して作るわけですが、締まり具合を均等にしないと、部分的に密度が違うことにより、亀裂の入る原因となったり、色々な問題が発生します。
なので、複雑な形状であればあるほど、細かい微調整が必要になります。
特に厚い部分と薄い部分の境界に亀裂が入りやすい。
肉厚のある部分と薄い部分が同じ品物の中に同居していると、大変ですね。
また、小さい品物だと穴も小さく、厚みも2mmや3mmといったものもあり、成形にはとても苦労します。
更なる技術の向上、そして伝承を目指して
――この仕事をしていて良かったと思う事は何ですか?
個人的な所で言えば、出来なかった事が出来るようになる。
自分の中でスキルアップを実感出来た時は、正直嬉しいですね。
これは技術的な所ですけど、他にも知識的な所でも、理解が深まった時、そのものに対して今までとは一歩踏み込んだ考え方が出来るようになった時は嬉しいですね。
後は当然、良いものが出来た時です。
以前は歩留まりが悪かったものが今回はNGを少なく生産出来た時などは、達成感があります。
――これからの仕事の展望について教えてください。
基本的に「プレスでは何でもやれるようになろう」というのが、目標ですね。
何か一つ出来れば良いというわけではなく、満遍なく色んな事が出来るようになりたいですね。
自分は現状の状況より成長し、今後、更にレベルの高い難しい事にも挑戦して行けたら良いなと思います。
――他にも部署内で取り組んでいる事はありますか?
スキルアップの一環として、「技術の継承」を当社全体として取り組んでいます。
技術を持った人から学んで、次へ伝えていく事を重視しています。
ベテランの方から教えてもらいやすい環境は整っていますし、自分も、自分の出来る事を後輩に伝えていけるよう心掛けています。また、自分自身も技術を習得できるよう、日々、取り組んでいます。
――職場の雰囲気はどうですか?
そうですね。先ほども言ったように、縦や横の繋がりもありますし、他の部署とも情報交換が出来るような組織が出来ていますので、やりやすいです。
雰囲気もいいと思います。
私は入社した当時、工具も触った事もないような未経験からのスタートでしたが、周りの方が諦めずにちゃんと教えてくれて、今に至ります。
しっかりと面倒を見てくれる会社だと思うので、入社希望の方も、その辺は心配せずに飛び込んで来て貰えればと思います。
知識が深まり、視点が変わるような経験。
――ここ数年で仕事の内容に変化があれば教えてください。
最初の方に言ったサンプルの窯を担当し始めたのがここ数年の事なのですが、これが一番大きいと思います。
勤続年数が長いので他の部署の仕事をさせてもらう機会も多く、その中で、サンプルではない製品の本焼成をする部署を経験した事もあったのですが、その時の経験が役に立っています。
窯が大型か小型かで、基本は一緒なんですね。
その小型の焼成炉を毎日やるようになって、製品の見方が変わりました。
プレス成型の仕事では、焼成後の製品をしっかりと見る機会は、あまり多くないんですよね。
プレスされた製品がどのように焼成されるかを毎日見る事が出来るのは勉強になりますし、自分のやりがいにも繋がります。
今までは「自分がやった工程についてはしっかりチェックするけど、人がやった品物はそこまで深く見る機会がない」という状態だったのが、サンプルの焼成を担当していると、すべての量産する前の品物を見る事になるわけです。
なので、これから作るものを一個一個理解する機会が出来る。
自分でそれを測ったりチェックしたりする事もあるので、担当しない品物の理解に繋がります。
考え方の幅や経験が深まりましたし、やりがいがあります。
これは、「やらせて貰ってありがたい仕事だな」と思っています。
――では昔と今では何か違いはありますか?
そうですね。
求められる事は年々厳しくはなっています。
やはり時代が時代なので、細かい所で昔のやり方が通用しなくなるって事はあると思います。
それでも、それを当たり前にしてしまえば良いことなので、その都度それに適宜対応してやっていくという感じですね。
――入社した当時に驚いた事などはありますか?
この分野は本当に初めてだったので、何もかもが新鮮でした。
日常ではとても経験出来ないような事もあります。
一つも予備知識として持っていたものはなかったので、「特にこれに驚いた」というよりは「セラミック製品は、こうやって出来ているのか!」っていう驚きがありましたね。
――普段仕事をしていて、特に感謝している人や部署、制度などはありますか?
基本的に職場の仲間には皆さんに感謝していますが、特に挙げるのであれば4人ほど。
まず、部署で一番出来るベテランの方が、セラミック製造に関して全て出来るような人なんですね。
入った時からずっとお世話になって、教えて貰っています。
困った時に頼れる人で、その人には本当に感謝しています。
次に、最初に入った時の教育係の方。
自分は「その人のコピーをする」という所から入っているので、自分にとっては特別な存在です。
そして、プレス以外では工場長ですね。
プレス以外の事では、工場長に相談する事が多いです。
すごく実直な方で、厳しい所もあるのですが、色々とお世話になって、感謝しています。
最後に、社長です。
全くの未経験で、即戦力とはいかない状態の所から、長い目で教育するという方針で採用して貰えたと思うんですけど、そのお蔭で今も勤め続けているので、感謝しています。
相談する時でも的確な助言をビシっと決めて貰えるし、頼りがいがあります。
今もスムーズに技術の伝承に取り組めるのも、社長の方針があっての事なので、自分も色々な事を覚えて、また、次の世代へしっかり伝えられるように頑張りたいと思います。
――最後に、このインタビューを見た方へメッセージがあればお願いします。
全くの未経験からでも、長く働けるという事については、私が前例になっていると思います。
しっかりとサポートする体制は整っていると思いますので、何も分からないとか、自信がないとか、そういう方でも安心して、とりあえずは来て頂ければと思います。
プレス部署では特に、「やる気のある方」、「根気のある方」を募集しています。
今回はプレス製造課の加藤さんにお話を伺いました。
トウゴクセラミックの主力の一端を担うプレス成形品ですが、その生産は職人たちの技術や工夫に支えられているのだと改めて実感しました。
ベテランでありながらも更なる経験と知識を積み重ね、勤続26年目にして「自分ではまだまだだと思っている」と語る加藤さんの向上心は、インタビュー担当者の印象にも強く残っています。
さて、プレス製造課から始まり、再びプレス製造課まで、全八回でお送りいたしました、「現場に聴く! 職人インタビュー」、いかがでしたでしょうか?
様々な職人たちの「現場の声」は、普段当社の製品を手にするお客様にとっては、中々見る機会の少ない、新鮮なものだったかもしれません。
今回のインタビューが、当社の製品に愛着を持っていただけるきっかけになっていれば、幸いです。
