第四回 焼成管理「届く形への意識」

届く形への意識

「現場に聴く! 職人インタビュー」では、ホームページだけではお伝えしきれないトウゴクセラミックの製造や生産管理などの情報を、現場へのインタビューを通して皆様にお伝えします。

第四回は、柿野工場、焼成管理課の沼田さんにお話を伺いました。

当社の柿野工場では、排ガス燃焼炉を装備したマイクロキルン(トンネル炉)によって、環境に配慮しながらも24時間365日体制で触媒担体製品を中心とした製品を焼成しています。

今回はそんな柿野工場、焼成課から、メンテナンスやスケジュール調整など、焼成炉にまつわる苦労や、お客様のもとへ製品が届ける最終工程へのこだわり、それを支える職人の人柄と、「現場の声」をお届けします。

32年のキャリアから焼成の現場へ

――本日はよろしくお願いします。まず、あなたの年齢、役職についてお答えください。

沼田です。53歳。
柿野事業所、生産技術部、焼成管理課の課長代理をやっています。

柿野事業所にマイクロキルンは2台有ります。そこでの焼成の実作業は同じ焼成管理課のメンバーに任せ、僕自身は焼成スケジュールの管理や出荷前のブレンド、出荷作業などがメインの担当です。

作業的には、焼成後、検査した製品を、お客様のスペックに合わせたものに混合して出荷する、という行程を担当しています。

製品を最終的にお客様にお渡しする形にする工程、と言っても良いと思います。

――この仕事を始めて何年になりますか? また、以前はどのようなお仕事を?

この仕事を始めて2年になります。
以前は大手のセラミック会社に32年間勤めていました。

以前の会社を退職してから自宅から近い場所で仕事を探していたのですが、セラミックの会社であれば経験を活かしてお役に立てるかな、という事で求人に応募させていただき、入社する流れとなりました。

――前職に比べて、同じセラミック会社でも違いはありましたか?

全然違いますね。(笑)
前職では半導体関係のセラミックに携わっていたのですが、色々な事の違いには、かなりびっくりしました。

私が勤めている柿野工場では、触媒担体・造粒などの特殊なセラミックを作っている事もありますし、工場のスケール感の違いでも最初は苦労しましたね。

ただ、ある意味、前職に比べたら、変なストレスはないですね。
入社当初も、年配の方々がしっかり教えてくれましたし、人間関係には恵まれていると思います。

24時間稼働し続ける連続炉

――あなたの仕事について簡単に説明してください。

焼成管理課の仕事は、生の製品をサヤに詰めて焼成炉で焼く仕事、その焼成体を客先仕様に合わせてブレンドをしてフレコンに詰める仕事、そしてそれを出荷する仕事があります。
焼成炉は連続炉なので、365日24時間稼働しています。夜間は自動で動いていますから、夜勤はありませんが、作業者は土日の日中も交代で勤務しています。

僕は、どのタイミングで何を焼くか、いつまでに焼くかなどの焼成スケジュールの管理をしながら、出荷前のブレンドを行い、フレコンに詰めて出荷する作業がメインです。
フレコンというのは……ちょうど今インタビューしている場所から見える、原料を入れる用の袋ですね。500kg単位のフレコンと1t単位のフレコンを使っています。

――見ただけでもかなりの量ですね。あちらが日にどのくらい出荷されるのですか?

製品の種類や出荷日にもよりますが、大型車で30袋積む事が多いので12tですかね。
専用の鉄カゴにフレコンを詰めて、フレコンの中に製品を詰めて、口を縛り、容器の蓋を締めて、出荷する流れになります。

それも僕が担当している出荷作業で、他には焼成炉のメンテナンスがあります。
専門の業者が居るのですが、グリスアップやセンサー周りの交換や、機械のエアー周りのパッキンの交換など、簡単なものは自分たちで行っています。

――あなたの一日のスケジュールを簡単に教えてください。

朝の全体朝礼が終わったら、個別に焼成メンバーが集まって各窯担当者での朝礼を行います。
僕は焼成の管理を任されていますので、各窯に対して、その日の作業内容や注意事項を指示します。
その後、僕は出荷やブレンド作業に移ります。

後は、本社の中水野工場から焼成する製品が届く事もありますので、そのスケジュール管理があります。
台車単位で製品の量が知らされるので、何日までにその分の台車を空けておいて、届いたものを詰め込んで焼成、という流れですね。

製品が切り替われば焼成温度や時間などの焼成炉の設定変更を行いますし、逆に焼成炉の能力に対して製造ペースが追い付いていない時などは、一時的に窯を停止して燃料を節約する判断をする事もあります。
停止と再稼働のタイミングをスケジュールと照らし合わせて決定するのも僕の仕事ですね。

触媒担体の製品は焼成後に自動的にふるいを掛けられ、検査部署に回されます。
その後、検査済みの製品をブレンドし、梱包から出荷までを行う作業が、やはり僕の一日で一番多い仕事ですね。

安心して仕事を任せられる人でありたい

――あなたの仕事は商品が出来上がる上でどのような役割ですか?

お客様に製品をお渡しするまでの工程、という感じですね。

焼成温度の管理や、ブレンド作業でお客様に合った製品を完成させる事は、最終工程として重要だと思っています。

――あなたの仕事は、社会でどんな風に役立っていますか?

そうですね……。
この辺りは僕も詳しい事は伺っていないのですが、紙オムツの吸収剤を作るのに使われているとは聞いています。

――特に密接に関わっている部署や役職はありますか?

最終的に僕がスケジュールを組むのですが、工場長には確認をよく取りますし、造粒や検査など、前後工程の責任者とは密接に関わっていると思います。

――あなたの仕事は社内ではどういう立ち位置ですか?

焼成管理課の責任者、となると思います。

個人的には「僕でいいのかなぁ」という気持ちはありますが、皆さんに助けられながら勤めさせてもらっています。
要領の良さには自信があるのですが(笑)

僕は窯業課出身で、前職から得た経験などはありますが、窯の知識や電気機械の知識など、もっと専門的なものがあればと感じる事も多いです。そういう意味では、新たな人材として、専門知識のある方が来てくれる事に期待していますね。

例えば工場長は機械に強いので、工場長に教えてもらったり、また、機械のメンテナンスは業者と相談したりと色々な人に支えられています。

――あなたは、周囲からどんな風に思われていると思いますか? また、どう思われたいですか?

どう思われているかは、直接周囲の人に聞いてみないとわかりませんが、「安心して仕事を任せられる人」だと思われたいですね。
多くは望みませんが、「沼田に任せておけば間違いないと思うよ」と言われるくらいには頼りになる人でありたいです。
「あの人かぁ……大丈夫かなぁ……?」と思われるのは嫌ですからね(笑)

――この仕事をしていて、特に苦労したエピソードがあれば教えてください。

焼成炉のトラブルが起こった時に夜間対応がある事ですね。

先ほど言ったように、柿野工場の連続炉は、24時間動いています。
日勤の間に焼成するレーンを用意しておけば夜間も無人で稼働するため、基本的に夜勤はありません。

ただ、夜間に焼成炉で何かトラブルがあった場合、窯を管理している機械から僕の携帯に電話が掛かってくるわけです。

一番の問題は、僕は毎日晩酌をしている事ですね(笑)
いざトラブルがあると、タイミングによってはもう飲んでしまっているので、工場長とか、他の責任者に応援を頼まなきゃいけなくなったり……。

安心して晩酌が出来るように、普段のメンテナンスは欠かさないようにしています。

――特に夜間対応で苦労した事例はありますか?

稀にあるトラブルと言っても、多くの場合は、雷の影響で瞬間的に停電したり、送られるべきレーンの台車が送られていなかった等、些細なものが大半です。

ですので、現場に到着して、「所定のボタンを押せば復旧する」程度の事が多いのですが、一度、どこを調べても動かない事がありました。

「おかしいな、何故動かないのだろう」と数人で悩んでいたのですが、結局、窯の緩衝材の石綿の切れ端がセンサーの上に「ちょこん」と乗ってしまっていただけだという事が判明しました。
それを取り除いたらセンサーが正常に作動して止まっていたレーンが動き始めたのですが、あの時は些細な原因に誰も気付けずに焦りましたね。

お客様へ届く形を作る仕事

――この仕事をしていて良かったと思う事は何ですか?

まずは、仲間に恵まれた事ですね。
仕事仲間も良く接してくれていますし、僕は人間関係に恵まれていると思います。

次に、全てとは言えませんが、自分に向いている作業を仕事に出来ている事です。
ブレンド作業は結局の所、一日中リフトで原料を移動させて、混ぜてを繰り返しているのですが、そういう適度に体を使う仕事は自分に向いていると思います。
体力を使う面もあるのですが、一日中座ってパソコンに向かっているよりは性に合っているので。

そして、最終工程のブレンドから出荷までを任せてもらっている事ですね。
お客様に届くまでの最後の工程は重要ですし、僕は前の会社から数えて34年もこの業界に居ますから、ここは手を抜いてはいけない所だと感じています。

紐の結び方ひとつでも、お客様に届く形を作っている以上、丁寧な仕事をしたいと思っています。
梱包状態が良くなるように工夫をしたり、なるべくきれいな状態で届くように気を遣ったり、ですね。
お客様の声が直接聞こえるわけではありませんが、「最近、担当の人が変わった?」と思ってもらえるような良い仕事を目指しています。

――これからの仕事の展望について教えてください

特に柿野工場では、少数精鋭での結局体力勝負みたいな所があるので、設備や作業内容の改善をしていく事が課題だと思います。
結構、皆さん頑張っていますから、少しでも作業者の負担を減らせるような方向で進んで行きたいですね。

僕も入社直後は造粒の部署へ配属されましたが、夏場の暑い頃の作業だった事もあり、7キロくらい痩せましたからね。
もっとも、僕自身は、痩せるし筋肉も付くし、「お金貰ってダイエット出来てお得」くらいに思っていましたが(笑)

――職場の雰囲気はどうですか?

雰囲気は良好だと思います。

――ここ数年で仕事の内容に変化があれば教えてください。

入社直後は造粒部署の製造管理課に配属されたのですが、焼成管理課の方が退職される事を機に、今の焼成管理課へ異動になった事ですね。

異動した当初は、先輩が退職するタイミングだった事もあり、製造の頃とは違う管理項目や、機械や窯のメンテナンスなどで苦労しました。

――普段仕事をしていて、特に感謝している人や部署、制度などはありますか?

基本的に、前後の部署の責任者さんには感謝していますし、工場長にも感謝しています。

あとは、普段から力になってくれている焼成のメンバーですね。
「この人は居てくれないと困る」と思っていますし、色々一緒になって考えてくれる事にも感謝しています。

――最後に、このインタビューを見た方へメッセージがあればお願いします。

柿野工場では、一緒に働く仲間、特に若手の作業者を募集しています。
最初は大変かもしれませんが、あなたの個性を活かせる、やりがいのある職場です。
中でも、体力に自信のある方のご応募をお待ちしています。


今回は柿野工場、焼成管理課の沼田さんにお話を伺いました。
焼成だけではなく沼田さんの、ブレンド、梱包や出荷における意識や「こだわり」は、製品がお客様の手元へ届く形を作る上で、重要な役割を持っていると思います。当社の製品が納品された際には、小さな事でもお客様のお役に立てていれば幸いです。

インタビュー中に度々出る周囲の人への感謝の言葉も、沼田さんの人柄の良さを表していて印象的でした。

次回は検査部署の中島さんのインタビューを掲載予定です。次回の更新をお楽しみに。

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