第六回 製造2課「職人の道具と技術」

「現場に聴く! 職人インタビュー」では、ホームページだけではお伝えしきれないトウゴクセラミックの製造や生産管理などの情報を、現場へのインタビューを通して皆様にお伝えします。

第六回は、製造二課の藤原さんにお話を伺いました。

当社の製造二課では、焼成前のセラミックを加工し、成形だけでは作れない多種多様な形状の製品を製造しています。
その技術はネジ加工、穴開け加工、横穴加工やミゾ加工、切断加工など多岐に渡り、エンジニアリングセラミックスを中心に量産品を安定的に生産すると共に、試作品や少数品のコストダウンや納期の短縮に寄与しています。

今回はそんな焼成前の切削加工技術を持つ職人が多く在籍する製造二課から、「現場の声」をお届けします。

勤続30年のベテランが語る、変わらないものづくりの本質

――本日はよろしくお願いします。まず、あなたの年齢、役職についてお答えください。

藤原です。50歳です。製造二課の課長です。

――トウゴクセラミックの製造二課では、どのようなお仕事を?

焼成前、窯に入れて焼く前の製品に加工を行う工程を担当しています。
削ったり、穴を空けたり、セラミックの生加工を担当する部署です。

――この仕事を始めて何年になりますか?

勤続30年、今年で31年目になります。

――30年前と今とで、大きな変化はありましたか?

まず、今インタビューしている、この建物(本社中水野工場)が無かったですね。
新しい機械も入っていますし、製品に求められる寸法についても、世の中の情勢に合わせてシビアになっている印象があります。

逆に、私が入社する前からずっと現役で使っている機械もありますし、「加工する」という仕事自体の本質は変わっていないと思います。

手作業と道具、職人技と工夫を繰り返す仕事

――あなたの仕事について簡単に説明してください。

具体的には、焼く前の品物に穴を開けたり、溝を入れたり、あとはバリ取りをしたり、大小様々なインゴットから削り出して品物を作ったり、ですね。

当社が主力としているプレス成形では主に円柱形状を得意としているのですが、横方向の加工はプレス成形だけでは難しいため、そこに溝や穴を手加工で加える事が多いです。

――では、その加工について、特に大変だと感じる所はありますか?

結局は手作業を繰り返す必要がある所ですね。
NC旋盤やボール盤等の機械でやるにしても放置出来ない作業が多いですし、人間が一個ずつ一個ずつやっていかなきゃいけないので、そこが根気仕事かなと思います。

――やはり、「職人の技術」のようなものが必要とされる部分は大きいのでしょうか?

そういう部分もあるにはありますね。
製品によっては正確に数字で表現出来ない形状になる事もありますし、その数字に持って行くための工程が「こんな感じ」としか言えないとか。

それこそ、加工に使う刃物から自作する必要がある事も多く、毎回手こずっています。

――加工に使う道具を手作りで?

そうですね。生加工とは言え、セラミックは硬いので、加工に使う刃物がすぐに切れなくなってしまうんです。

最初は既製品を使うのですが、切れ味が落ちたら研いで使う事を繰り返していると、形状が変わっていってしまう。
その微妙な調整をしながら研ぐのはもう自分の手でやるしかないので、道具の調整にはちょっと手間取るかなって気がします。

――あなたの一日のスケジュールを簡単に教えてください。

始業後に集まって、朝礼をして、打ち合わせの後は作業に入る、という流れですね。

もちろん新人の方も居ますが、基本的にはベテランさんが多い部署ですので、それぞれで担当作業をやって、困りごとがあればその都度相談して、というくらいですね。
「この作業は私に」という役割分担が自然と出来ています。

――では、各職人さんが、一つの作業を一日中担当する形が多いのでしょうか?

基本、一つずつ担当者が付いていなければいけない仕事なので、同時進行が出来ないんですね。
機械を何台も動かして、それを一人で見るとか、そういう仕事ではないので。

数が少なくてすぐに終わるものなら、この作業をやって、次はこの作業をやって、と1日で切り替わる事はありますけど、基本的には何日か続けて同じ事をやっていく、という事が多いです。

加工によって製品の可能性を広げる

――あなたの仕事は商品が出来上がる上でどのような役割ですか?

やはりプレス成形だけでは出来ない部分の加工を担っているので、後の工程に与える影響は大きいと思います。

これは前工程のプレスでも同じ事ですが、この工程で問題があれば、寸法が違ったとか、思ったように焼けなかったとか、狙った寸法が出なかったとか、欠けたりとか、割れたりする。
これらは後工程のバレル、研磨や焼き直しで修正可能な事もなくはないですが、ほぼ取り返しが付かない。

不良を出さないように一定数で寸法を測定する事はもちろん、作業中に違和感があったら部署内で共有したり、前工程の部署と連携したりと、確認する事は怠らないようにしています。

――あなたの仕事は、社会でどんな風に役立っていますか?

機械に組み込まれるアルミナやジルコニア等の絶縁体や耐摩耗部品。
他にも、当社はアルミナやSiC材質の糸道が得意な会社なので、釣り道具のラインガイド等に使われていると聞いています。

――トウゴクセラミックでは小型精密部品を扱っていますが、いままで扱った製品の中で、特に小さいものはどんなものでしたか?

最小のものだと……記憶で話しているので正確な寸法は定かではないですが、径が3mmの高さが2.0mmのパイプがあって、その側面に焼き上がりで0.3mmの横穴を開ける、というものがありました。

この加工に使うドリルを研ぐのが大変なんです。
小さすぎて固定するのも一苦労で、拾って並べて向きを揃えるのも大変。

プレス品など、当社で扱っている製品にはもっと小さいものもありますが、今まで加工した中ではこれが最小です。

――特に密接に関わっている部署や役職はありますか?

やっぱり前後するプレスと焼成、あとはバレルの研磨の方とはよく話をします。

焼成後のバレルでどれくらい研磨代が必要だから、どれくらい削っておけばいいんだろうとか、そういう取り決めや、結果の確認等のやり取りがありますね。

――あなたの仕事は社内ではどういう立ち位置ですか?

全ての製品に関わっているわけではないですが、プレス後の製品にひと手間を加える事で実現出来る製品も多いので、重要な立ち位置だとは思います。

この仕事は、当社で対応出来る製品の可能性を広げる、必要な作業だと思っています。

――あなたは、周囲からどんな風に思われていると思いますか? また、どう思われたいですか?

答えにならないかもしれないですけど、周囲がどう思っているかは私が決める事じゃないので、何ともいいようが無いですね。

強いて言うなら、業務に支障が出る程嫌われてなければいいなぁ、と(笑)

技術と道具、再現性を目指す工夫

――この仕事をしていて、特に苦労したエピソードがあれば教えてください。

やはり、先ほど話した焼き上がり0.3mm径のドリル加工は苦労しました。

あとは、加工に使う刃物を超硬の板から削り出して自作する事があるのですが、そこで手間取ると時間が掛かったりして大変ですね。

焼成体ほどではないにせよ、加工に使う刃物は、徐々に切れ味は鈍ってきます。
研ぎ直した分だけ微妙に変わってしまう刃の形を微調整する必要がありますし、その再現性を保つのに苦労しています。

私が担当していないNC旋盤でも、数字を1回打ち込んだら終わりではなく、刃物の減りに合わせて見ながら調整しています。

――道具の調整と再現性は共通の課題なんですね。

寸法に合わせて1回ポンと再現出来たら良いんですけど、ずっとそれが最後まで変わらないかと言われると、そうではないので。
刃物が切れなくなれば、品物が壊れていく事もあります。
派手に壊れてくれるのは見てわかるんですけど、静かにヒビが入っていたりするとわからないので、気にしながら作業しています。

もちろん不良があれば検査のチェックで発覚するのですが、多量に発生させるわけにもいかないので。

――使用する道具に関して、特に苦労した例などはありますか?

今はあまりやらなくなりましたけど、板を研いで刃物にして、ボール盤の先のホルダーに止めて、回転させて削る、という工程がありました。
その寸法を出すのに、止め加減で、こう……場所を調整する必要があるんです。

芯出しして、削っていくんですけど、寸法が出ないとちょっと片側に寄せてみたり等の微調整が頻発する。
軽く叩くとか、ネジを緩めて、位置を決めて締め直して、削って、測って、と繰り返して。
で、そうしている内にまた刃物が切れなくなってっていう繰り返しなので、昔は大変でした。

――板を研いで刃物にする所から自作するんですか?

そうです。
既製品やチップを使う事もありますけど、この場合は板から全部自分で研いでいます。

大きさによるんですけど、例えばRの付いた刃物が必要な時など、製品の形状に合わせた刃物を研いで作る事が多いです。

――となると、現場にはオリジナルの道具がたくさんありそうですね。

ホルダーとかそういうものも含めて、数えきれないくらいあるかと思います。
品物ごとに特注したものを、微調整したり、他の品物に流用するために作り替えたり、それがそれぞれの職人さんごとにあるので、正確な数は把握しきれないくらいにあります。

――この仕事をしていて良かったと思う事は何ですか?

1つ目は、達成感がある事です。
品物を一つ一つ加工していく仕事なので、「作ってる感」がありますし、「一個ずつ進んでるな」と実感出来るところが良いですね。

2つ目は黙々と集中出来る事です。
仕事で相談する事はあっても、結局は一人でやる作業なので、例えば穴を開ける作業を二人で連携してやります、とかそういう作業ではないです。
逆に言えば集中力が必要な仕事ではあるんですが、私はそっちの方が得意なので、向いているなと思います。

最後に、自分で工夫して作業出来る事です。
些細な事だったりもしますけど、工夫するのがハマった時がちょっと嬉しい。
それこそ紙工作だったり、本当にその辺にあるものを使って、作業がうまく出来た時に、ちょっと楽しいかなって感じますね。

――では、中でも特に好きな作業はありますか?

ガイドのバリ取りは好きですね。

楕円の内側にバリが立つので、それを手作業で取る。
テーパーを切ったものが多いんですけど、真円の場合は機械で刃物を当てる事も出来るんですが、楕円だとそうはいかないので手作業になります。

刃を当ててぐるっと回すのにもコツが要るんですが、この作業は黙々と出来て好きです。

職人の技術を継承する取り組み

――これからの仕事の展望について教えてください。

今以上に他の部署と連携が出来るといいですね。

当社は横の繋がりが悪くはないと思うのですが、もっと他の部署の人に、自分たちのやっている事を見てもらって、理解してもらって、逆に自分たちも見に行きたいし理解した上で、それぞれの仕事を協力していけたらいいかな、と思います。

その仕事自体が出来なくても、こういう事をこういう理屈でやっています、みたいな事を、お互いにわかるように、コミュニケーションを取っていきたいですね。

――他にも部署内で取り組んでいる事はありますか?

部署としては、技術の伝承に力を入れています。
仕事の引継ぎですね。

製造二課にはベテランの方が居るんですけど、この人だけがやっていた仕事があって、一人の人が最初から最後の工程までを一貫して担当している作業がありました。
これを引き継いでもらうために、新人さんについてもらっています。

将来的には各工程を複数の人間が担当出来るように技術を伝承していけたらと思います。

ベテランの方の技術は、それこそ本当に職人技だと思うので、この取り組みがうまく行くといいなと思います。

――職場の雰囲気はどうですか?

それぞれの作業をそれぞれにやっている感があるんですけど、雰囲気は悪くないですね。

別にみんながそっぽを向いているわけでもないですし、いい距離感だと思います。
やっぱりベテランの職人が多いので、特別親密な雰囲気というわけではないですが、相談も出来ますし、作業の分担も、誰がどのくらい何が得意かも大体わかっているので、そういう話もしやすいですし、ちょうどいい感じだと思います。

先日も新人さんが入ってきたんですが、その人も自分の仕事に集中する方だったので、自然と職場に馴染んでいます。

――やはり集中したい人やコツコツとした作業が得意な方が向いている職場ですか?

そうですね。
もちろん、周りに話しかけにくいだとか、そういう事はないと思いますし、困った事があればいつでも声を上げてほしいとは思っているので、気軽に相談してください(笑)

――ここ数年で仕事の内容に変化があれば教えてください。

品物の形は変われど、切削加工という仕事の本質は変わっていないと思います。

製品の形状が変わったり、原料が変わったりはあっても、大きな変化は感じていません。

もちろん、個人の技術は向上していますし、昔と思えば今の方が良い道具が揃っていたりと、そういう部分で助けられている変化もあります。

――では、新しく導入された道具の中で、特に感動したものはありますか?

特に新しい道具というわけではないんですけど、導入した時に感動したものに、ボール盤の先に付ける「ボーリングヘッド」というものがあります。

片刃の刃物をボール盤に締めて回転させるので、その径で穴が開けられるというものなんですけど、その芯をぶらしてくれるんです。
つまり、穴の径を、刃を取り外す事なく調整出来る、という道具で、これはすごく便利になりました。

結構昔からあったものではあるのですが、十年以上前に初めて使った時は感動しましたね。
製品に合わせて刃物を自作しなくても、今あるものである程度調整が利くので、自分の中では衝撃的でした。

――普段仕事をしていて、特に感謝している人や部署、制度などはありますか?

とにかく、同じ部署の人との関係性も良好で、ありがたいなと思っています。
みんなそれぞれが知っている事や得意な事が違うので、色々な事を他の人に教えていただけるような環境になっているのは、とてもありがたいと思いますね。

例えば、前職で測量をやっていた方が居て、その方に図面から寸法の実寸を出す計算で助けていただいたりして感謝しています。
他にも健康診断の制度だとか、会社にも色々な所で助けていただいています。

やっぱり、誰が何を得意としているのか、この人はこんな事を知ってそうだっていうのを、コミュニケーションを取りながら把握しておきたいですね。

――最後に、このインタビューを見た方へメッセージがあればお願いします。

当社が製造しているファインセラミックは非常に精密なものですが、焼き物である以上、昔からの地場産業である陶器の頃から本質は変わっていません。

作品を作るような気持ちでコツコツと製品を作りたい方、一つずつ仕事をこなして、積み上げていく達成感が欲しい方は、ぜひ当社の求人に応募してみてください。


今回は製造二課の藤原さんにお話を伺いました。

藤原さんを始めとする職人たちの技術や、それを実現するために加工に使う道具から自作する話には、非常に感心させられるものがありました。
「仕事の内容は変わっていない」と語る藤原さんが束ねる製造二課は、日々の工夫と共に、加工という工程を支え続ける「確かな技術を持った職人が集まる、プロフェッショナル集団」なのだなという印象を持ちました。

次回は営業部署の松永さんのインタビューを掲載予定です。次回の更新をお楽しみに。

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